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Fedora Asahi Remix 43公開 AppleシリコンMac向けLinuxは“試すもの”から“使うもの”へ近づきました

筆者: admin


Fedora Asahi Remix 43公開 AppleシリコンMac向けLinuxは“試すもの”から“使うもの”へ近づきました

Fedora ProjectとAsahi Linux Projectは3月18日、Appleシリコン搭載Mac向けディストリビューション「Fedora Asahi Remix 43」を公開しました。
今回のリリースでは、Fedora Linux 43ベースへ移行したうえで、KDE Plasma 6.6を中心となるデスクトップ環境として採用したことが大きな特徴です。M2 Pro/Max搭載MacBookの内蔵マイク対応や、14/16インチMacBook Proの120Hz対応なども盛り込まれ、Apple Silicon MacでLinuxを普段使いするハードルは、また少し下がったといえそうです。

KDE Plasma 6.6を前面に打ち出したFedora Asahi Remix 43

Fedora Asahi Remix 43でまず目に入るのは、KDE Plasma 6.6を前面に出してきたことです。GNOME版やServer版、Minimal版も用意されていますが、今回のリリースの顔になっているのはKDEだと見ていいでしょう。

Fedora Magazineの発表によると、Fedora Asahi Remix 43はFedora Linux 43をAppleシリコンMacへ用いた最新版で、KDE Plasma 6.6をデスクトップとして採用しています。あわせてGNOME 49版、Server版、Minimal版も用意されており、デスクトップ用途から軽量構成まで選択肢が広がっています。パッケージ管理面でも、RPM 6.0 や PackageKit向けDNF5バックエンドが導入されており、見えにくい部分もきちんと手当てされました。

Fedora Asahi Remixそのものも、以前よりだいぶ「特別な環境」ではなくなってきました。Appleシリコン向けの固有パッケージがFedora 43側へ取り込まれ、Fedora本流との距離が縮まっているからです。AppleシリコンMacでLinuxが動く、という段階から、AppleシリコンMacでLinuxを使う、という段階へ寄ってきた。今回のFedora Asahi Remix 43は、そう受け止めるのが自然です。

実用の中心は引き続きM1/M2世代

現時点で、Fedora Asahi Remix 43の実用中心といえるのは、やはりM1世代とM2世代です。

Asahi Linuxの案内でも、Fedora Asahi Remixの主な対象はM1/M2系のMacBook、Mac mini、Mac Studio、iMacとされています。世代別のサポート表を見ても、このあたりはインストーラ対応済みの機種が多く、Wi-Fi、Bluetooth、キーボード、トラックパッド、3.5mmジャックといった普段使いに欠かせない部分はかなり揃っています。

今回の改善の中でもわかりやすいのが、M2 Pro/Max搭載MacBookの内蔵マイク対応です。スペック表の一項目に見えますが、実際にはかなり大きい更新です。会議、録音、音声入力。どれも日常的に使う機能で、ここが自然に動くかどうかでノートPCとしての印象は大きく変わります。

AppleシリコンMac向けLinuxの出来を評価するとき、どうしてもGPUやドライバの話が先に立ちます。ただ、実際に“使えるかどうか”を決めるのは、こうした地味な部分だったりします。Fedora Asahi Remix 43は、そういう毎日の使い勝手に関わるところを着実に埋めてきたバージョンです。

14/16インチMacBook Proは120Hz対応へ、ただしProMotion/HDRは未対応

14/16インチMacBook Proユーザーにとっては、120Hz表示への対応も見逃せません。
スクロールやウィンドウ操作の感触にそのまま効いてくるので、体感しやすい改善です。普段触っていて気持ちいいかどうか、という点では、今回の更新の中でもかなり目立つところでしょう。

14/16インチMacBook ProについてVRR(ProMotion)とHDRは未対応と明記されています。
つまり、120Hzで動くようにはなりましたが、表示機能がmacOSと同じ水準まで揃ったわけではありません。つまり、Fedora Asahi Remix 43で120Hz駆動には前進したものの、macOSと同等の意味で「ProMotion対応」になったわけではありません。

Mac Pro対応は前へ進みました。ただ、まだ“完成”とは言いにくい

今回の発表で注目を集めやすいのが、Mac Pro(2023、M2 Ultra)の新規サポート追加です。Fedora Magazineは改善点のひとつとしてMac Proへの対応追加を明記しており、Appleシリコン世代のMac ProがFedora Asahi Remixの射程に入り始めたこと自体は事実です。

ただし、Asahi LinuxのM2世代サポート表を確認すると、Mac ProについてはInstallerがWIP、HDMI AudioがWIP、SpeakersがTBAとされており、まだ未完成な部分が残っています。Fedora Asahi Remix公式ページでも、Mac Proでは内蔵PCIeはあってもGPUカードはサポートしないという注記があります。したがって現状は、「Mac Proのサポートが始まった」と表現するのが妥当で、「完全対応」と言い切るのは早い段階です。

M3/M4世代は引き続き開発途上

一方で、M3世代とM4世代は、まだ一般利用向けとは言いにくい状況です。M3世代ののサポート表を見ると、標準M3搭載機ではインストーラ未対応の機種が多く、ディスプレイ、Wi-Fi、Bluetooth、マイク、Webカメラなども、まだ揃っていません。

M3 Pro/Max搭載のMacBook Proでは、キーボードやトラックパッド、3.5mmジャックのように先に動いている部分もあります。ただ、全体として見ると、まだ“使えるところから埋めている途中”という印象が強いです。

M4世代はさらに初期段階で、サポート表ではInstallerがno、多くの主要機能がTBAのままです。Asahi Linux自身も、機能対応の可否は「ドキュメントに supported と記載されたときが基準」としています。

使えるようになった一方で、未対応機能もまだ残る

ここまで来ると、AppleシリコンMac向けLinuxはかなり実用的になったといってよさそうです。ただ、細かく見ていくと、まだ埋まりきっていない部分もあります。

わかりやすいところでは、Touch IDがまだ未対応です。Thunderbolt/USB4も開発中の扱いで、動画まわりではVideo DecoderがWIP、Video EncoderはTBAとされています。普段のデスクトップ用途では気にならない場面も多いでしょうが、周辺機器やメディア機能まで含めてApple純正環境と同じ感覚で使えるわけではありません。

音声出力まわりでも注意点があります。たとえばHDMI Audioについて、Asahi Linux公式のサポート表にはプレビュー扱いの注記があり、音の冒頭が切れる、ノイズが入る、映像は出ても音が出ない場合があるといった制限が案内されています。デスクトップ用途としての完成度は上がっている一方、細部ではなお「開発継続中のLinux環境」であることも忘れないほうがよさそうです。

Apple Silicon Mac向けLinuxとしては大きな節目

それでも、今回のFedora Asahi Remix 43が大きな更新であることは間違いありません。KDE Plasma 6.6を中心に据え、M1/M2世代の使い勝手を引き上げ、Mac Pro対応にも手を伸ばし始めました。グラフィックス基盤としても、OpenGL 4.6、OpenGL ES 3.2、OpenCL 3.0、Vulkan 1.4の適合実装を掲げています。

少し前まで、AppleシリコンMacでLinuxを動かす話には、どうしても“面白い挑戦”という空気がありました。いまは少なくともM1/M2世代について、その段階をかなり抜けつつあります。Fedora Asahi Remix 43は、その変化をわかりやすく見せるリリースです。

まとめ

Fedora Asahi Remix 43は、AppleシリコンMac向けLinuxの使い勝手をまた一段引き上げました。とくにM1/M2世代では、KDE Plasma 6.6を中心に据えた構成に加え、M2 Pro/Max搭載MacBookのマイク対応、14/16インチMacBook Proの120Hz対応といった改善が効いています。毎日触る環境として見たとき、確実によくなっています。

その一方で、Touch ID、Thunderbolt/USB4、HDR、VRR、HDMI Audioの安定性など、まだ埋まりきっていない穴もあります。Mac Proは“対応開始”の段階で、M3/M4世代はまだ開発途中です。

要するにFedora Asahi Remix 43は、AppleシリコンMacすべてに向けた完成版ではありません。ただ、M1/M2世代のMacでLinuxを本気で使いたい人にとっては、いまかなり有力な選択肢になっています。今回の更新は、そこをはっきり示したものだといえます。

Fedora Asahi Remix 公式ページ

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